高齢化とともに「ひとり暮らし」の方が増えている現代。配偶者や子どもなど頼れる家族が身近にいない場合、自分の意思や資産をどう守り、誰に託していくかは大きな課題です。今回は、法的に信頼できる人を選び、任せていくための制度とポイントをご紹介します。
なぜ「託す相手」が必要なのか?
終末期や死後には、多くの意思決定や事務手続きが発生します。たとえば、
- 医療・介護の選択
- 財産管理・年金手続き
- 死後の手続き(葬儀・遺品整理・解約等)
これらを誰にも頼めない状態だと、自分の意思が反映されず、トラブルにつながる恐れがあります。そんな方のためにも、任意後見制度があります。
任意後見制度を活用しよう
任意後見制度とは?
将来、判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ信頼できる人を「後見人」として契約で指定しておく制度です。本人が元気なうちに契約を結ぶ点が特徴です。
- 公正証書で契約する
- 家族以外(友人・専門職など)でもOK
- 発動は家庭裁判所の審査を経てからとなります
任意後見人になれる人
家族だけでなく、以下のような人・団体にも依頼できます。
- 信頼できる友人
- 行政書士、司法書士、弁護士
- NPO法人や社会福祉法人などの専門団体
その人、本当に信頼できますか?
形式上は誰でも選べますが、「信頼できるかどうか」は慎重に判断を。以下のような点をチェックしましょう!
- 長年の付き合いがあり、人柄をよく知っている
- 金銭感覚や生活スタイルが自分と合う
- 契約内容を理解し、誠実に対応してくれそう
- 万一の際にも連絡がつく体制がある
※信頼性に不安がある場合は、専門職との契約や法人後見の利用も検討しましょう。
任意後見契約を結ぶまでの流れと期間
① 後見人候補との話し合い(1〜2週間)
- 誰を後見人にするかを決め、その人に引き受けてもらえるかを確認します。
- 自分の希望(財産管理・医療判断・死後事務など)を共有し、合意形成を行います。
② 契約内容の準備(1〜2週間)
- 任意後見契約書の原案を作成。
- 代理権の範囲、報酬、死後事務委任などの取り決めも含めます。
- 必要に応じて、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に相談。
③ 公証人との打ち合わせ・予約(1〜2週間)
- 任意後見契約は「公正証書」で結ぶ必要があります。
- 公証役場に予約し、契約内容を確認。
- 本人と後見人候補が同席して署名します。
④ 公正証書での契約締結(当日)
- 予約日に公証役場で契約を締結。これで正式に「任意後見契約」が成立します。
合計期間の目安としては1か月〜2か月程度必要となる
契約の内容や関係者のスケジュールによって前後します。専門職に依頼する場合は、書類作成や調整がスムーズになるため、比較的短期間で完了することもあります。
注意点
- 任意後見契約は、契約しただけでは効力は発生しません。
- 本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所の審査を経て「任意後見監督人」が選任されてから発効します(これに数週間かかる場合もあります)。
契約後にやっておくべきこと
- 契約内容をエンディングノートなどに明記しておく
- 代理権の範囲(医療、財産など)をはっきりさせておく
- 他の親族にも伝えておくことでトラブル予防に
自治体のサポートを活用しよう
多くの自治体では、任意後見制度の相談窓口や、地域包括支援センターでの情報提供を行っています。まずは地元の窓口に問い合わせてみましょう。
ひとり暮らしでも、法的な備えをしておけば、万一のときに「自分らしさ」を守ることができます。誰に託すかは、人生後半の大切な意思決定。信頼できる人や専門家に支えてもらいながら、今のうちに準備を始めましょう!
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