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終活を「死の準備」から「生き方のデザイン」へ──ラストナビ代表 本多桃子さんに起業のきっかけをインタビュー

株式会社ラストナビ(以下、ラストナビ)は、2025年の3月に創業したベンチャー企業です。「デジタル世代の終活のスタンダードを創る」というビジョンを掲げ、主に終活にまつわる事業を展開。2025年10月には、デジタルエンディングノート「LastNavi」β版をリリースし、11月には本メディア「ラストナビ終活」を立ち上げました。

今回、代表取締役の本多桃子さんに創業にいたったきっかけや、自身のビジョン、また今後「終活」をどのようにアップデートしていきたいのか、想いをインタビューいたしました。

祖母の死をきっかけに「株式会社ラストナビ」を起業

──終活にまつわる事業を起業をしたきっかけは何ですか?

もともと自分で事業をはじめたいと考えていた矢先に、祖母の死を経験したことがきっかけです。
亡くなったあとの手続きや情報整理には想像以上に時間とお金がかかり、悲しみを受け止める余裕すらないほど大きな負担となりました。

その時、「自分にもしものことがあったら、資産のデジタル化が進んでいる分、さらに複雑になるのではないか」と感じ、生前から情報を整理し、家族に安心を残せる仕組みの必要性を強く意識しました。
さらに、寿命の延伸や家族の多様化、デジタル資産の複雑化といった社会的背景もあります。

「死」について考えることはなんとなく避けられがちですが、だからこそ自分らしい終わり方をデザインすることが大切だと考え、「新時代の終活スタンダードをつくりたい」という思いから、起業を決意しました。

「デジタルエンディングノート」を基軸に、「終活のプラットフォーム」を目指す

──「LastNavi」の事業内容を一言で表すとどのようなものになりますか?

一言でいうと、「デジタルエンディングノート」です。資産や契約、医療や介護の希望などを整理し、必要なときに家族と共有できる仕組みを提供しています。

将来的には、死後の手続きの代行や専門家とのマッチングまで含めた「終活のプラットフォーム」へと発展させ、より幅広く安心を支えられる存在を目指しています。

終活の「不安・不便・不透明さ」を解消し、誰もが安心して自分らしい最期を準備できる仕組みをつくりたい

──「LastNavi」で、終活のどのような課題を解決したいと考えていますか?

終活に取り組む上で、いくつかの大きな「不」があると感じています。

まず一つ目は、「何から始めればいいのかわからない」という不安です。終活の知識や情報が十分に行き渡っておらず、多くの人が重要性を理解しながらも行動に移せずにいます。

二つ目は、「自分の意思や大切な情報がうまく伝わらない」という不便です。病気や介護が必要になったとき、あるいは亡くなったあとに、自家族に必要な情報が届かないケースが少なくありません。

三つ目は、「デジタル資産の管理が難しい」という不透明さです。オンラインアカウントやサブスクリプション契約など、デジタル資産はどんどん増えているのに、管理や承継の方法が整っていないのが現状です。

こうした「不安・不便・不透明さ」を解消し、誰もが安心して自分らしい最期を準備できる仕組みをつくりたいと考えています。

IT業界でのキャリアを活かして、アナログ中心な終活をより便利で安心できるものに変えていくことができるのでは

──本多さんの起業前のキャリアを教えてください。またその経験が、「LastNavi」にどうつながっていますか?

これまでIT業界で営業や事業開発を経験してきました。特にIoTの分野では、インターネットと無縁だったモノをつなげて生活を便利にしたり、蓄積したデータを活用して新しい仕組みをつくる仕事に携わってきました。

一方で、終活は依然としてアナログが中心です。エンディングノートは紙が主流で更新や共有が難しく、資産や契約の情報も紙とオンラインにまたがって管理されていて、整理しづらいのが現状です。

だからこそ、IoTで実現してきたことと同じように、デジタル化によって終活をより便利で安心できるものに変えていきたい。そして、その過程で得られた知見を「終活のベストプラクティス」として社会に還元していく仕組みが必要だと考えています。そこに、これまでの経験を活かせるのではないかと思います。

多くの仲間が同じ課題を感じ、応援してくれています

──起業するにあたって、周囲からの反応はどうでしたか?

起業を決めたとき、多くの人が「面白い挑戦だね」と応援してくれました。特にIT業界の仲間からは、「デジタルアカウントって確かに死後どうなるんだろうね」と共感してもらえて、とても心強かったです。

一方で「終活は重いテーマだから難しいのでは?」と心配する声もありました。でも私は、人生の終わりを考えることが、人生をより充実させるきっかけになると思っています。 だからこそ、前向きに、ポジティブな文化として広めていきたいと考えています。

デジタルエンディングノート「LastNavi」を中心に、大きく3つの展開を検討中

──今後、「LastNavi」で提供予定の具体的なサービスについて教えてください。

私たちのサービスには、大きく3つの特徴があります。
まず、資産や契約、デジタルアカウントなどを一元管理できるデジタルエンディングノート機能を提供します。スマホやPCから簡単に作成でき、いつでも・何度でも更新できるので、終活を気軽に始められるのが大きな特徴です。

次に、必要な情報を「誰に」「いつ」「何を」伝えるかを自分で設計できる仕組みを備えています。信頼できる相手にだけ必要な情報を、適切なタイミングで共有できるので、安心して備えることができます。

さらに将来的には、亡くなった後の契約解除や各種手続きを自動で代行するなど、未来の手続きをサポートする機能も開発中です。本人の意思に基づいて手続きを進められる仕組みによって、家族の負担を大きく減らすと同時に、本人の尊厳を守ることを目指しています。

単なる記録ツールにとどまらず、終活全体を支援できるプラットフォームへ

──類似サービスと比べてどのような強みがありますか?

現在提供されている終活支援サービスの多くは、紙のエンディングノートや一部の機能に特化したアプリが中心です。しかし、それらは更新や共有がしにくく、さらに死後の手続きまでを十分にカバーできないといった課題が残っています。

LastNaviの強みは、そうした課題を包括的に解決できる点にあります。単なる「記録」にとどまらず、本人が意思を持って情報の伝え方を設計できる仕組みを備え、さらに将来的には死後の手続き代行や専門家とのマッチングまで含め、終活全体を支援できるプラットフォームを目指しています。

デジタル時代にふさわしい形で、終活をトータルに支援できること。これが私たちの最大の強みです。

オンラインアカウントやサブスク契約など、デジタルを活用する幅広い世代の方に活用してもらいたい

──「LastNavi」をどんな方に利用して欲しいと考えていますか?

特定の世代に限らず、スマホやPCを日常的に使う人なら、どなたにとっても役立つサービスだと思っています。オンラインアカウントやサブスクリプション契約など、今は年代を問わずデジタルの資産を持つのが当たり前になっていますよね。

だからこそ、若い方も含めて「いざというときのために少しずつ準備しておく」ことに意味があるのかなと思います。もちろん、身近に介護や相続のことを考える機会が増える世代には、より実感を持って使っていただけるかもしれません。

最終的には、デジタルを活用する幅広い世代の方に寄り添えるサービスにしていきたいと考えています。

「デジタル終活といえばLastNavi」と言っていただけるようなサービスに育てたい

──5年後、10年後に 「LastNavi」、もしくはご自身はどうなっていたいと考えていますか?

5年後には、「デジタル終活といえばLastNavi」と言っていただけるようなサービスに育てたいと思っています。
安心して使える仕組みを確立し、専門家や関連機関とも連携しながら、終活の新しいスタンダードを形づくっていきたいです。

10年後には、終活が特別なことではなく、人生をより良く生きるための前向きな文化として社会に根付いている未来を描いています。その中でLastNaviが、その文化を支えるインフラのような存在になっているのが理想です。

個人としても、事業を通じて「自分らしい生き方をデザインできる社会」を広めることに貢献し続けつつ、自分自身の終わり方、そして生き方もきちんとデザインしていきたいと考えています。

自分のことを自分で整理しておくことが当たり前になれば、家族に負担をかけないだけでなく、自分の尊厳を守ることにもなる。

──終活のアップデートによって社会や業界がどんな風に変化すると良いと思いますか?

「死後のことは家族に任せるもの」と、なんとなく考えている人も少なくないと思います。その結果、家族が必要な情報や故人の意思を把握できず、負担となってしまうケースがあります。

終活によって自分のことを自分で整理しておくことが当たり前になれば、家族に負担をかけないだけでなく、自分の尊厳を守ることも可能になります。さらに、「おひとりさま」として生きる選択もしやすくなる。

そうした仕組みが整うことで、自分らしい生き方を選びやすくなり、人生の多様性が広がっていく未来を描いています。

本当に安心できる終活プラットフォームを目指すために、多様な協力者と力を合わせながら進めていきたい

──今後、仲間や協力者にどんな人が加わってほしいですか?

一緒にサービスをつくっていく仲間には、ビジネスを推進するのに必要な専門スキルを持った方はもちろん大歓迎です。でも、それ以上に「終活を前向きな文化にしていきたい」という思いに共感し、一緒に挑戦してくれる方に加わっていただけたら嬉しいです。

死や終活はどうしてもネガティブなイメージで語られがちですが、私たちは「自分らしい生き方を支える前向きな準備」として広めていきたい。そのビジョンを一緒に共有しながら、新しい仕組みをつくっていける方に出会えたら心強いですね。

また、士業や医療・介護などの専門家とも積極的に連携していきたいと考えています。ユーザーにとって本当に安心できるプラットフォームを目指すために、多様な協力者と力を合わせながら進めていければと思います。

終活がタブーではなく、人生を豊かにする前向きな準備として当たり前に語られる世の中にしたい

──ありがとうございます。それでは、今後の目標を教えてください。

短期的には、まずサービスを安心して使っていただける形に磨き込み、ユーザーの声を反映しながら改良を重ねていくことを目標にしています。小さくても確かな実績を積み重ね、信頼を得ることが大切だと思っています。

中期的には、亡くなった後の手続き代行や専門家とのマッチングといった機能を拡充し、終活を幅広くサポートできるプラットフォームへと育てていきたいです。

そして長期的には、「自分らしい終わり方=生き方をデザインする」という文化を社会に根付かせたいと考えています。終活がタブーではなく、人生を豊かにする前向きな準備として当たり前に語られる世の中をつくることが最終的な目標です。

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