公正証書遺言は、法的にもっとも信頼性が高く、後々のトラブルを避けやすい遺言書の形式です。ここでは、公正証書遺言を作成するための基本的な流れを、必要な準備や関係者とのやりとりも含めて解説します。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証人が法律にもとづいて作成する遺言書です。遺言者の口述にもとづいて公証人が作成し、本人と証人2名の立ち会いのもとで完成します。作成後は原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんのリスクもありません。
公正証書遺言の作成ステップ
1. 作成内容を整理する
まず、遺言書に何を書くかを明確にします。具体的には以下のような内容です。
- 誰に何を相続させたいか(法定相続人・相続分)
- 特定の財産(不動産・預貯金・株など)の分配
- 付言事項(家族へのメッセージなど)
- 遺言執行者の指定(任意)
あらかじめ 財産のリストアップ や 相続人の情報整理 をしておくとスムーズです。
2. 公証人との事前相談
作成予定の遺言の内容をもとに、公証役場に事前相談します。
このとき、財産の内容や意向を伝えることで、形式上・法的に問題のない内容に整えてくれます。
公証人の探し方
- 地元の公証役場に問い合わせる
- 士業(司法書士・行政書士・弁護士など)経由で紹介してもらう
※作成する場所は、基本的には 地元でも東京など他地域でも可。高齢や病気などの事情があれば出張対応も可能です。
3. 必要書類の準備
以下の書類が一般的に必要です。
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 財産に関する資料(登記簿謄本・通帳コピーなど)
- 相続人の戸籍謄本
- 不動産の評価証明書(必要に応じて)
- 証人2名の情報(氏名・住所・生年月日・職業)
※証人は士業でなくてもOKです。ただし親族や未成年者、遺言の利害関係者は不可です。
トラブルを防ぐ、また中立性を保つため、信頼できる知人や専門家(司法書士・行政書士など)に依頼するケースが多く見られます。
4. 作成・署名・押印
公証人が遺言内容を読み上げ、本人と証人2名の立ち会いのもとで内容を確認します。問題がなければ、それぞれ署名・押印して完成です。
5. 原本保管と正本の交付
- 原本は公証役場に保管され、閲覧・謄本取得が可能です。
- 本人には 「正本」 と 「謄本」 が交付されます。
- 正本は信頼できる人や専門家と共有するのもおすすめです。
公正証書遺言のメリット
- 自筆証書遺言と比べて 無効になるリスクが低い
- 家庭裁判所の 検認が不要
- 紛失・改ざんのリスクがほぼゼロ
- 専門家が関与するため 形式・法的ミスが起こりにくい
費用の目安
費用は遺産総額やページ数により異なりますが、おおよその相場は以下の通りです。
- 公証役場の手数料:1〜5万円程度(資産額により変動)
- 出張を依頼する場合:別途日当・交通費
- 証人報酬(依頼した場合):1人5,000〜10,000円程度
計画的に準備しよう
公正証書遺言は、「確実に意志を残したい」「家族に迷惑をかけたくない」と考える人にとって、もっとも信頼できる遺言の手段です。
少し手間はかかりますが、一度作っておくと安心感が大きく、将来のトラブル回避にもつながります。
終活の一環として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
コメント